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採用代行の契約書で失敗しない注意点15選【2026年最新・チェックリスト付き】
「採用代行を依頼したいが、契約書で何を確認すればいいのかわからない」「過去に採用代行業者とトラブルになった経験があり、次は失敗したくない」――そんな不安を抱える人事担当者・経営者は少なくありません。
結論として、採用代行の契約書では「業務範囲の定義」「許認可の確認」「個人情報保護」「SLA(サービスレベル合意)の設定」「契約解除条件」の5つが特に重要です。これらが曖昧なまま契約を締結すると、業務範囲の認識ズレ、想定外の追加費用、個人情報漏洩、法令違反などの深刻なトラブルに発展しかねません。
本記事では、採用支援・採用コンサルティングの実績を持つ株式会社Buddy Dataが、採用代行契約書の作成・確認時に押さえるべき15の注意点をチェックリスト形式でまとめました。トラブル事例とSLA設計の具体例も交えた、実務で使える内容です。
| 確認したいポイント | 結論 | 詳細 |
|---|---|---|
| 契約形態は何が適切? | 準委任契約が一般的 | 業務の遂行を目的とし、成果物の完成を約束するものではない |
| 許認可は必要? | 委託募集に該当する場合は厚生労働大臣の許可が必要 | 応募受付や日程調整のみなら許可不要のケースもある |
| 個人情報の扱いは? | 契約書に保護条項を必ず含める | 応募者データの取扱い・保管・削除ルールを明文化する |
| SLAは必要? | 設定を強く推奨 | KPI・対応速度・レポート頻度などを数値で合意する |
| トラブル時はどうする? | 損害賠償・契約解除条件を事前に定める | 中途解約の違約金・引き継ぎルールも明記する |
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採用代行の契約書とは?基本知識を押さえる
採用代行における業務委託契約の定義
採用代行(RPO:Recruitment Process
Outsourcing)を外部業者に依頼する際には、業務委託契約書の締結が不可欠です。業務委託契約とは、自社の業務の一部を外部の企業や個人に委託する際に取り交わす契約を指します。
法律上「業務委託契約」という名称の契約類型は存在しません。実務上は、民法に定められた「請負契約」「委任契約(準委任契約)」のいずれか、またはこれらを組み合わせた形で締結されるのが一般的です。
準委任契約と請負契約の違い
採用代行では、準委任契約で締結されるのが一般的です。両者の違いを正確に理解しておくことが、契約書の内容を精査するうえでの前提になります。
| 比較項目 | 準委任契約 | 請負契約 |
|---|---|---|
| 目的 | 業務の遂行 | 仕事の完成(成果物の納品) |
| 報酬の発生条件 | 業務を適正に遂行したこと | 成果物が完成・納品されたこと |
| 善管注意義務 | あり | なし(結果責任を負う) |
| 瑕疵担保責任 | なし | あり(契約不適合責任) |
| 中途解約 | 原則可能 | 相手方に不利な時期でなければ可能 |
| 印紙税 | 非課税(原則) | 課税対象(契約金額に応じて) |
採用代行業務は「採用活動のサポート」であり、特定の成果物の完成を約束するものではありません。そのため、準委任契約が適しています。ただし、「採用サイトの制作」など特定の成果物が伴う業務を含む場合は、その部分を請負契約として分離しなければなりません。
雇用契約・人材派遣契約との区別
業務委託契約と雇用契約・人材派遣契約は、指揮命令関係の有無で区別されるのがポイントです。
| 契約形態 | 指揮命令権 | 業務の管理者 |
|---|---|---|
| 業務委託契約 | なし(受託者が独立して業務を遂行) | 受託者側 |
| 雇用契約 | あり(雇用主が労働者に指示) | 雇用主側 |
| 人材派遣契約 | あり(派遣先企業が派遣社員に指示) | 派遣先企業側 |
採用代行業者のスタッフに直接業務指示を出してしまうと、「偽装請負」とみなされるリスクがあります。業務の進め方は受託者側に委ね、発注者が行うのはあくまで「業務要件の伝達」と「成果物・業務報告の確認」に限定してください。
採用代行の契約書で違法になるケースとは
採用代行の契約・運用において法令に違反するケースを整理しました。知らずに違法状態に陥ることを防ぐため、必ず確認してください。
委託募集の許可が必要なケース
職業安定法第36条では、労働者の募集を第三者に委託する「委託募集」について、厚生労働大臣または都道府県労働局長の許可を得ることを義務づけています。許可を得ずに委託募集を行った場合、1年以下の懲役または100万円以下の罰金が科されるおそれがあります。
具体的に許可が必要になるのは、以下のような業務を委託する場合です。
- 求職者への求人情報の直接的な提供・案内
- 求人広告の作成・掲載(求職者に対する募集行為)
- 応募者の合否判定(採用の意思決定そのもの)
許可が不要なケース
一方、以下の業務は「委託募集」には該当せず、許可なく委託できるとされています。
- 応募書類の受付・整理
- 面接日程の調整
- 選考結果の事務的な連絡
- 採用管理システムの運用
- 採用データの集計・レポート作成
- スカウトメールの送信(求職者への情報提供ではなく、企業側からのアプローチ)
重要なポイントは、「最終的な採用の意思決定を自社で行っているかどうか」にあります。採用の合否判定を委託先に丸投げしている場合、委託募集に該当するリスクが高まるため注意が必要です。
実際に行政指導を受けた事例
事例1:許認可未取得による改善命令
ある中小規模の採用代行業者が、委託募集の許可を取得せずに求人広告の作成・掲載業務を行っていたケースでは、労働局の立ち入り検査で許認可の未取得が判明し、改善命令が出されました。
事例2:個人情報漏洩による行政指導
ある採用代行業者が求職者の個人情報の管理が不十分であったため、外部に情報が流出する事件が発生しました。個人情報保護法違反として行政から厳しい指導がなされ、業者は再発防止策の徹底を求められました。
事例3:虚偽の求人広告
採用代行業者が成果を上げるため、実態と異なる好条件の求人広告を掲載していたケースが発覚しました。企業のブランドイメージに大きな打撃を与え、求職者との信頼関係も損なわれました。
これらの事例はいずれも、契約書の段階で責任範囲と遵法体制を明確にしておけば防げたものでしょう。
採用代行の契約書に記載すべき12項目
採用代行の業務委託契約書に記載すべき主要項目を一つずつ確認していきましょう。
項目1:契約の目的
契約の趣旨・背景を記載する項目です。「甲(委託者)の人材採用活動に係る業務を乙(受託者)に委託し、甲の採用目標の達成を支援するもの」といった形で、契約の全体像を示します。
項目2:業務内容・範囲・仕様
契約書の中で最も重要な項目です。
委託する業務の内容、範囲、仕様を具体的かつ詳細に記載してください。曖昧な記載はトラブルの最大の原因になります。
記載すべき事項の例は以下の通りです。
- 対象となる採用ポジション(職種・雇用形態・採用人数)
- 委託する業務の具体的な内容(スカウト、書類選考、面接調整等)
- 使用するツール・媒体の指定
- 業務の品質基準(KPI・SLA)
- 委託先が行わない業務の明示(ネガティブリスト)
項目3:契約期間・更新条件
契約の開始日・終了日、自動更新の有無と条件を記載します。採用代行は3か月〜12か月の期間契約が一般的です。自動更新条項を入れる場合は、更新拒否の通知期限も忘れずに明記しましょう。
項目4:報酬・支払条件
報酬の金額、支払い方法(月額固定・従量課金・成果報酬等)、請求と支払いのタイミング、消費税の取扱いを記載してください。
項目5:秘密保持(NDA)
委託先が知り得る自社の経営情報、採用戦略、候補者情報などの秘密保持義務を定める項目です。契約終了後も一定期間(通常は2〜5年)秘密保持義務が継続する旨を記載するのが一般的でしょう。
項目6:個人情報の取扱い
採用代行では応募者の氏名・住所・学歴・職歴・連絡先など、大量の個人情報を取り扱います。個人情報保護法を遵守した取扱いルールを詳細に定めなければなりません。
記載すべき事項の例は以下の通りです。
- 個人情報の利用目的の限定
- 第三者提供の禁止(再委託の場合の例外規定を含む)
- 情報の保管方法(暗号化・アクセス制限等)
- 契約終了後のデータ削除・返還ルール
- 情報漏洩時の報告義務と対応手順
項目7:知的財産権の帰属
採用代行の過程で作成される求人票、スカウト文面、採用サイトのコンテンツなどの著作権・知的財産権がどちらに帰属するかを明確にしておきましょう。
項目8:再委託の可否
受託者が業務の全部または一部を第三者に再委託できるか否かを定める項目です。再委託を認める場合は、事前承認の要否、再委託先の管理責任、秘密保持・個人情報保護の義務の承継を記載してください。
項目9:損害賠償
業務の遂行に関して一方の当事者が他方に損害を与えた場合の賠償責任を定める項目です。損害賠償の上限額(契約金額の総額を上限とするケースが多い)と、免責事項を具体的に記載してください。
項目10:契約解除条件
以下のような場合に契約を解除できる旨を定めましょう。
- 契約上の義務に重大な違反があった場合
- 信用状態が著しく悪化した場合(破産手続開始の申立て等)
- 反社会的勢力との関係が判明した場合
- 法令に違反する行為が発覚した場合
項目11:中途解約のルール
契約期間満了前に中途解約する場合のルールを定めます。通常は「解約希望日の1〜3か月前までに書面で通知する」という条項が設けられるでしょう。中途解約時の違約金(残存契約期間の報酬額の一定割合等)も明記してください。
項目12:紛争解決方法
契約に関する紛争が生じた場合の解決方法(協議・調停・裁判等)と、管轄裁判所を定める項目です。
採用代行の契約書作成時の注意点15選
ここからが本記事の核心です。契約書の作成・レビュー時に確認すべき15のチェックポイントを一つずつ確認しましょう。
注意点1:業務範囲は「やること」だけでなく「やらないこと」も明記する
業務範囲の認識ズレは、採用代行で最も多いトラブルの原因にほかなりません。「スカウト配信代行」と記載しても、「ターゲットリストの作成」まで含むのか含まないのかで認識が分かれてしまいます。
対策:業務範囲定義書(SOW:Statement of
Work)を契約書の別紙として作成し、委託する業務と委託しない業務を具体的に列挙する。
注意点2:KPI・SLAを数値で合意する
「質の高いサービスを提供する」という抽象的な文言では、品質の判断基準が曖昧なまま。具体的な数値目標を設定し、双方で合意しておくことが極めて重要です。
SLA設計の具体例
| SLA項目 | 基準値 | 測定方法 |
|---|---|---|
| スカウト送信数 | 月間200通以上 | 月次レポートで確認 |
| スカウト返信率 | 5%以上 | 月次レポートで確認 |
| 応募者への初回連絡 | 応募から24時間以内 | ATS上のタイムスタンプで確認 |
| 面接日程調整の完了 | 候補者回答から48時間以内 | ATS上のタイムスタンプで確認 |
| 月次レポートの提出 | 翌月5営業日以内 | 提出日の記録 |
| 定例MTGの実施 | 月2回以上 | 議事録で確認 |
注意点3:委託先業者の許認可を必ず確認する
委託する業務内容が「委託募集」に該当する場合、委託先業者が厚生労働大臣の許可を取得しているか、または職業紹介事業の許可を保有しているかを確認しましょう。許認可の確認を怠ると、委託者側にも法的責任が及ぶ可能性があります。
確認方法:厚生労働省の「人材サービス総合サイト」で事業者の許可番号を検索可能です。
注意点4:個人情報の取扱いルールは別紙で詳細に定める
採用代行では応募者の個人情報を大量に扱うため、個人情報保護に関する条項は契約書本文だけでなく、別紙として「個人情報取扱規程」を作成することをおすすめします。
特に以下の事項を明確に定めてください。
- データの保管場所(クラウド・オンプレミス)と暗号化の有無
- アクセス権限を持つ担当者の範囲
- データのバックアップ・廃棄ルール
- 漏洩発生時の初動対応と報告フロー(発覚後24時間以内の報告を推奨)
- 個人情報保護責任者の指定
注意点5:報酬体系と追加費用の発生条件を明確にする
「月額固定30万円」という契約であっても、業務量が想定を超えた場合に追加費用が発生するのか、どの時点から追加費用が発生するのかを明確にしておかなければなりません。
よくあるトラブル事例:当初の想定より採用ポジション数が増えたが、契約書に追加費用の規定がなく、追加請求を巡ってトラブルに発展するケース。
注意点6:定例振り返りと改善提案の義務を明記する
契約書や業務範囲定義書に「月次定例振り返りの実施」「改善提案の提示責任」を明記しておけば、サービス品質の継続的な改善を制度として担保できるでしょう。
定例MTGで確認すべき事項の例は以下の通りです。
- 当月のKPI達成状況
- 採用市場の動向・求人倍率の変化
- 候補者からのフィードバック
- 次月の改善施策と優先順位
注意点7:レポーティング内容と頻度を具体的に定める
委託先業者からのレポートは、採用活動のPDCA推進に不可欠です。レポートの内容(何を報告するか)、形式(テンプレートの指定)、頻度(週次・月次)、提出期限を契約書に明記してください。
注意点8:再委託の条件を厳密に設定する
採用代行業者が業務の一部を別の業者に再委託するケースは珍しくありません。しかし、再委託先の品質管理や個人情報保護体制が不十分であれば、リスクは委託者にも波及しかねません。
推奨する記載内容
- 再委託は書面による事前承認を必須とする
- 再委託先の会社名・業務内容・個人情報管理体制を事前に報告する義務
- 受託者は再委託先の行為について連帯して責任を負う旨の規定
注意点9:中途解約と引き継ぎルールを事前に定める
採用代行のサービスに不満がある場合や、採用計画の変更により契約を途中で解除したいケースに備え、ルールを事前に定めておくことが不可欠です。
引き継ぎに関して定めるべき事項
- 中途解約時の通知期限(解約希望日の1~3か月前)
- 引き継ぎ期間の設定(通常1か月程度)
- 候補者データ・選考情報の返還方法
- 引き継ぎ期間中の業務範囲と報酬
- 進行中の選考案件の取扱い
注意点10:損害賠償の上限額と範囲を設定する
損害賠償条項は、万が一トラブルが発生した場合の経済的リスクを管理するための条項です。賠償額の上限を定めずに契約すると、想定外の高額賠償を請求されるおそれがあります。
一般的な設定例としては、「損害賠償の上限額は、事故発生日を含む直近12か月間に支払った委託料の総額を上限とする」という形が多く見られます。
注意点11:印紙税の要否を確認する
契約形態によって印紙税の取扱いが異なる点にも注意が必要です。
| 契約形態 | 印紙税 |
|---|---|
| 準委任契約 | 非課税(原則) |
| 請負契約 | 課税(契約金額に応じて200円~60万円) |
| 継続的取引基本契約 | 4,000円 |
採用代行の契約が「継続的取引の基本となる契約書」(印紙税法上の第7号文書)に該当する場合は、4,000円の印紙が必要になります。判断に迷う場合は、税理士または弁護士に確認するのが確実でしょう。
注意点12:反社会的勢力の排除条項を含める
契約当事者が反社会的勢力でないことを相互に表明・保証する条項(反社条項)は、現在のビジネス慣行において必須です。反社会的勢力との関係が判明した場合に無催告で契約を解除できる旨を定めておきましょう。
注意点13:法改正への対応条項を設ける
労働関連法規や個人情報保護法は頻繁に改正されます。「法令の改正により契約内容の変更が必要な場合は、双方協議のうえ速やかに契約を変更する」という条項を入れておけば、法改正時の対応をスムーズに進められるでしょう。
注意点14:契約書の変更・修正手続きを明確にする
契約締結後に業務範囲や報酬を変更したい場合の手続きを定めておきましょう。「変更は書面(覚書・変更契約書)によるものとし、双方の記名押印をもって効力を生じる」といった規定が一般的です。口頭やメールだけの変更合意はトラブルの原因になりかねません。
注意点15:フリーランスへの委託時は特に注意する
フリーランス(個人事業主)に採用代行を業務委託する場合、以下の追加的な注意点があります。
- 偽装請負のリスク:業務の遂行方法や時間を細かく指定すると、実態が雇用関係とみなされる可能性がある
- インボイス制度への対応:適格請求書発行事業者の登録番号を確認する
- フリーランス保護法(2024年11月施行)への対応:取引条件の明示義務、報酬の支払期日制限(60日以内)などの遵守が必要
契約書のチェックで不安な点はありませんか?
株式会社Buddy Dataでは、採用代行の契約設計に関する無料相談を承っています。業務範囲の定義からSLA設計まで、実務経験に基づいたアドバイスが可能です。
採用代行の契約書チェックリスト
契約書の最終確認に使えるチェックリストです。契約締結前に必ず全項目を確認してください。
業務範囲に関するチェック
- 委託する業務の内容・範囲・仕様が具体的に記載されているか
- 委託しない業務(ネガティブリスト)が明示されているか
- 業務量の上限・追加費用の発生条件が明確か
法令遵守に関するチェック
- 委託先業者の許認可(委託募集許可・職業紹介事業許可)を確認したか
- 個人情報保護に関する条項が詳細に定められているか
- 反社会的勢力の排除条項が含まれているか
品質管理に関するチェック
- KPI・SLAが数値で合意されているか
- 定例MTG・レポートの内容と頻度が定められているか
- 改善提案の義務が明記されているか
リスク管理に関するチェック
- 損害賠償の上限額と範囲が適切に設定されているか
- 秘密保持義務の範囲と期間が定められているか
- 再委託の条件と管理責任が明記されているか
契約終了に関するチェック
- 契約解除条件が漏れなく定められているか
- 中途解約のルール(通知期限・違約金)が明記されているか
- 引き継ぎ手続きとデータ返還ルールが定められているか
採用代行契約のトラブル事例と対策
実際に起きた(または起きやすい)トラブル事例とその防止策をまとめました。
トラブル事例1:業務範囲の認識ズレ
事例:「スカウト代行」を委託したが、委託先はスカウトメールの送信のみを行い、ターゲットリストの作成は業務範囲外と主張。委託者はターゲットリストの作成もスカウト代行に含まれると認識していたため、追加費用を巡ってトラブルに発展した。
対策:SOW(業務範囲定義書)を作成し、各業務の定義と範囲を具体的に記載する。「スカウト代行」の場合、ターゲット選定、リスト作成、文面作成、送信、返信対応のどこまでが範囲内かを明示しておくことが不可欠。
トラブル事例2:成果報酬の定義が曖昧
事例:成果報酬型で「採用決定時に1名あたり50万円」と契約したものの、「採用決定」の定義が曖昧で、内定承諾時点なのか入社日時点なのかで見解が分かれた。内定辞退が発生した際、報酬の返還を巡ってトラブルに発展。
対策:「採用決定」の定義を契約書で明確にしておく。入社後一定期間(例:試用期間3か月)内に退職した場合の返金規定(リプレイスメント条項)を設けることも重要。
トラブル事例3:個人情報の目的外利用
事例:採用代行業者が、委託者から預かった応募者データを自社の別クライアントの採用支援にも流用していたことが発覚した。
対策:個人情報の利用目的を「本契約に基づく業務遂行のみ」に限定する。契約終了後のデータ削除を義務付け、削除証明書の提出を求めることが必須。定期的な監査権限を契約に含めることも忘れずに。
トラブル事例4:契約期間中のサービス品質低下
事例:契約初月はレスポンスが早く丁寧だったが、数か月後に担当者が変更されて以降、レポートの提出が遅延し、改善提案もなくなった。
対策:SLAに「対応速度」「レポート提出期限」を数値で定め、SLA未達時のペナルティ(報酬の減額等)を規定しておく。担当者変更時の事前通知義務を盛り込むことも有効。
トラブル事例5:中途解約時の引き継ぎ不備
事例:サービスに不満を感じて中途解約を申し出たところ、3か月前の通知が必要とされ、その間も満額の報酬支払いを求められた。さらに、引き継ぎ時に候補者データの返還が不完全で、選考中の候補者との連絡が途絶えた。
対策:中途解約の通知期限は1か月前とし、引き継ぎ期間は別途設ける。候補者データの完全返還を契約上の義務とし、返還の形式(CSV・Excel等)と期限も明記しておくべきでしょう。
SLA(サービスレベル合意)の設計方法
採用代行の品質を担保するSLAの設計方法を紹介します。SLAを設けることでサービス品質を「見える化」し、双方の認識を合わせられるのがメリットです。
SLAに含めるべき指標
量的指標(業務量に関するKPI)
- 月間スカウト送信数
- 月間応募者対応数
- 月間書類選考処理数
- 月間面接日程調整数
質的指標(サービス品質に関するKPI)
- スカウト返信率
- 書類選考通過率
- 面接設定率(日程調整完了率)
- 候補者満足度(アンケートによる測定)
スピード指標(対応速度に関するKPI)
- 応募者への初回連絡までの時間
- 面接日程の調整完了までの時間
- 月次レポートの提出日
- 緊急連絡への回答時間
SLA未達時の対応ルール
SLAを設定するだけでなく、未達時の対応ルールも事前に合意しておきましょう。
| SLA達成度 | 対応 |
|---|---|
| 100%以上 | 通常通り(インセンティブを設けても良い) |
| 80~99% | 改善計画書の提出を求める |
| 60~79% | 翌月の委託料を一定割合(例:10%)減額する |
| 60%未満 | 契約解除事由とする |
契約書の作成はどちらが行うべきか
一般的な慣行
採用代行の業務委託契約書は、委託先(受託者)側が自社のひな形をベースに作成し、委託者(発注者)側がレビュー・修正するケースが一般的です。ただし、自社に法務部門がある場合や顧問弁護士がいる場合は、自社のひな形をベースに作成するほうが有利な条件を設定しやすくなるでしょう。
法務チェックの必要性
契約書の最終確認は必ず法務の専門家(顧問弁護士または法務担当者)に依頼してください。特に以下の点は専門家のチェックが不可欠です。
- 委託募集の許可要否の判断
- 個人情報保護法に基づく条項の適法性
- 損害賠償条項の妥当性
- 印紙税の要否判断
- フリーランス保護法への対応状況
法務チェックを省略した結果、法的トラブルに発展するケースは少なくありません。契約書の作成・レビューにかかる弁護士費用(数万円〜10万円程度)は、トラブル発生時の損害と比較すれば極めて低コストな投資と言えるでしょう。
採用代行の契約でお困りですか?
株式会社Buddy Dataでは、採用代行の業者選定から契約設計、SLA設計まで一貫したサポートを無料でご提供しています。法的リスクを抑えた契約書の設計を一緒に考えましょう。
よくある質問(FAQ)
Q1.
採用代行を依頼するのに契約書は必ず必要ですか?
はい、必ず締結すべきです。口頭やメールだけの合意では、業務範囲・報酬・責任分担の認識がズレた場合に証拠がなく、トラブル時に不利な立場に立たされるリスクがあります。また、個人情報保護法上も、個人情報の取扱いに関する契約を書面で取り交わすことが求められている点を忘れないでください。
Q2.
採用代行の契約は何か月くらいが適切ですか?
3か月〜12か月が一般的です。初めて利用する業者の場合は、まず3〜6か月の短期契約で効果を検証し、問題がなければ12か月契約に移行するのが得策でしょう。ただし、短期契約の場合は月額単価が割高になるケースもあるため、コストとリスクのバランスを考慮してください。
Q3.
フリーランスに採用代行を業務委託しても大丈夫ですか?
法的には可能です。ただし、フリーランスは法人と比較してセキュリティ体制や事業継続性にリスクがあるため、以下の点を慎重に確認してください。個人情報保護体制の確認、適格請求書発行事業者の登録状況、フリーランス保護法の遵守、偽装請負にならない業務指示の方法、万が一の事故時の賠償能力——これらすべてをクリアしているかがポイントです。
Q4.
採用代行の契約書にSLAは必須ですか?
法的に必須ではありませんが、設定を強くおすすめします。SLAがないと、サービス品質が期待を下回った場合でも「契約上の義務違反」を立証するのが困難になるためです。SLAを数値で合意しておけば、品質低下時の交渉力を確保できるでしょう。
Q5.
採用代行業者が許認可を持っていない場合はどうすればいいですか?
まず、委託する業務内容が「委託募集」に該当するかどうかを確認してください。該当する場合は、許認可を持つ業者に変更するか、委託募集に該当しない業務範囲に限定して契約するかのいずれかの対応が必要です。判断に迷う場合は、管轄の労働局に問い合わせるとよいでしょう。
Q6.
契約期間中に業務範囲を変更したい場合はどうすればいいですか?
契約書に定められた変更手続きに従い、変更覚書(アメンドメント)を作成して双方が署名・押印します。口頭やメールだけで変更合意をすると後からトラブルになりやすいため、必ず書面で残してください。変更に伴う報酬の増減も覚書に明記しましょう。
Q7.
採用代行の契約で印紙は必要ですか?
契約形態によって異なります。準委任契約の場合は原則非課税。請負契約の場合は契約金額に応じた印紙税が課されます。また、契約期間が3か月を超える「継続的取引の基本となる契約書」(第7号文書)に該当する場合は4,000円の印紙が必要です。判断に迷う場合は税理士に確認してください。
Q8.
採用代行の契約終了時に候補者データはどうなりますか?
契約書の規定に従います。一般的には、契約終了後に委託先が保有する候補者データ(応募者情報・選考記録等)を委託者に返還し、委託先のシステムからは削除する旨を定めるのが通例。返還の形式(CSV・Excel等)、削除の期限(契約終了後30日以内等)、削除証明書の提出義務を契約書に明記しておくことをおすすめします。
まとめ
本記事では、採用代行の契約書で失敗しないための15の注意点をお伝えしました。
この記事でわかったこと
- 採用代行の契約は準委任契約が一般的であり、業務委託契約書の締結は必須である
- 委託募集に該当する業務を委託する場合は、厚生労働大臣の許可が必要であり、無許可は法令違反になる
- 契約書に記載すべき12項目(目的・業務範囲・報酬・秘密保持・個人情報・知的財産・再委託・損害賠償・解除条件・中途解約・紛争解決・変更手続き)を押さえる
- 業務範囲の認識ズレ、成果報酬の定義曖昧、個人情報の目的外利用、サービス品質低下、中途解約時の引き継ぎ不備が主なトラブル事例である
- SLA(サービスレベル合意)を数値で設定し、未達時のペナルティルールも合意しておくことが品質担保の鍵である
- 契約書の最終確認は必ず法務の専門家に依頼すべきである
採用代行は、正しく活用すれば採用活動の効率と質を大幅に高められるサービスです。しかし、契約書の設計が不十分であれば、コスト増大・法令違反・情報漏洩などの深刻なリスクにもなり得ます。本記事のチェックリストを活用し、安全で効果的な採用代行の運用を目指してください。
採用代行の契約設計から運用まで、一貫してサポートします
株式会社Buddy Dataは採用支援・採用コンサルティングの専門企業です。業者の選定から契約書の設計、SLAの策定、運用後の品質管理まで、トータルでサポートいたします。まずは無料相談でお気軽にご相談ください。
本記事の情報は2026年3月時点のものです。法令・制度の最新情報は、管轄の労働局・弁護士・税理士にご確認ください。
